少年は大志を抱いたか?

 オーストラリアのメルボルン大学には色々なサービスを提供する機関があります。その中の留学生に対してコンサルティング(私生活その他もろもろに関して)を行なっている部署が、毎年国別の昼食会を催しています。これはつまり、留学生が慣れない文化の中で孤立して、精神的にダメージを受ける前に、同じ国の友人・話し相手を作る機会を与えようという企画です。昨年は大学の定める昼食時になぜか講義があって参加できませんでしたが、今年は近くの寮の日本人にも声をかけて参加してみました。

 国別とは言っても日本だけでなく、韓国と台湾とでひとグループになっています。参加者は予想通り少なく20人程度でしたが、そのほとんどは交換留学生でした。日本人は私と私が声をかけた二人の他にもう二人、やはり交換留学生が来ていました。昨年は日本からの交換留学生は一人だけでしたが、今年は5人いるそうです。ここで耳にしたのは日本人留学生はメルボルン大学に65人いる、という話ですが、参加した5人ともとても信じがたい、と言う意見で一致しました。多分2ヶ月間の語学コース等の参加者も含めての数字だろうと思います。先日今年度の学生登録の時に私のパスポートを見て声をかけて来た日本人の大学院生がいましたが、やはり日本人の知合いが全然いないと言っていました。

 特徴的なのは日本人留学生のほとんどが女性である事です。女の子が多い理由は二つあると思います。一つはよく知られた事実として、近ごろは女の子の方がより ambitious である事です。クラーク博士の有名な言葉「少年よ、大志を抱け」は、私は多分「おまえら若いくせに、もう少し欲を出したらどうなんだ!」の誤訳だろうと思っていますが、少女の方が先に大志を抱いてしまったようです。

 もう一つははっきり言って、やはり女性の方が高いとされる語学能力の問題です。日本人のよく行くアメリカ等の大学とは違い、メルボルン大学は英語の補習を条件に入学許可という制度がありません。つまり最初からある程度の英語力を要求されるわけで,TOEFLの点数で言えば学部生にも580を要求しています。これは到底「普通」に勉強している大学生に取れる点数ではありません。私が大学生の時にTOEFLを受けたならせいぜいが480点,つまり百点の不足だったろうと思います。昼食会に参加していた5人の日本人の内二人はいわゆる帰国子女でした。