メルボルンで家探し

 メルボルンに着いて当初数日間は、前回書いたようにメルボルン大学の寮に入ったのですが、この寮は学部生向きでにぎやか過ぎ、大学院生がこもって勉強するのには不向きでした。そこで授業が始まる前に家探しをはじめました。

 メルボルン大学には学生の宿の紹介をする専属の部署があり、ここに行くと掲示板いっぱいにアパートや下宿、また一緒に家を借りるパートナーを求める情報が得られます。壁に貼られている紙を見ていくとなかなか条件が面白く、男性希望、女性希望の他には喫煙者はだめ、というのが目につきます。留学生歓迎と明記されていたり、中にはアフリカ人希望とか、国名を指定しているもの、宗教を条件にしたり、ベジタリアンに限る、というものまであります。

 でも私はここでは気にいったものが見つからず、町中の不動産業者を何軒か廻ってみました。ここのシステムは面白く、不動産屋さんへ入って登録されている部屋の台帳を見せてもらい、気に入ったものがあったら鍵を借りて自分で見に出かけるのです。

 オーストラリアの町中は、すべて通りの名前が住所の基準になっていますから、その通りがどこにあるかさえわかれば家を見つけるのは簡単です。「○○通りX番」と書いてあればその通りへ行って番号を追えば、すぐ見つけることができます。片側に偶数、反対側には奇数番号が振られています。

 メルボルンにはビクトリア風と呼ばれる、イギリス・ビクトリア王朝の植民地時代に建った古い家が多いのですが、いくつかそうした家を見たところ、なんとなくかび臭いものが多いので、一軒屋はとりあえず対象から外すことにして、ターゲットを現代的なアパート(と言っても日本で言えばマンションでしょう)に絞りました。

 そして見つけたものが、3階建て新築の2階、共同のジムがつき、アパートの前はゴルフ上、動物園へは歩いて5分、大きな公園に囲まれた静かな場所でした。大学へは徒歩15分、スーパーへは反対方向に15分、トラム(市電)の駅には1分、メルボルンの町の中心にはトラムに乗って10分という地の利です。

 部屋は寝室が二つにキッチン、リビングとダイニングは兼用、そしてバスルーム。バスルームが広くて、なんだか以前東京で借りていたワンルーム・マンションの部屋くらいの広さがあります。これで家賃は月約5万円でした。東京新宿で借りていたワンルームはバブルの頃だったとは言え9万円…。

 しかも、礼金などはありませんし、また紹介してくれた不動産屋へ払う手数料などもありません。敷金は1ヶ月分でしたが、2年後に出る時に部屋の状態が良い、ということで全額返って来ました。日本とは違い、借り手の保護が行き届いているのです。

 すべて法律で取って良い料金、いけないもの、そして敷金の率までが決まっています。外国人であるとか、そうした理由で貸すことを拒否したりしたら犯罪になります。家を借りる時には不動産屋から「問題があったらここへ連絡するように」と専門の政府の部署を教えられます。これも不動産屋に課された義務なのです。いやいや驚きました。これから比べると日本のシステムはお寒い限りです。