メルボルンで住みはじめる

 いよいよメルボルンの新居への入居です。まず入るまでに最低限の家具を揃えておかなくてはなりません。それに寝具や調理器具も。そこで出かけたのがリサイクル・ショップです。メルボルンには住宅街のメイン・ストリートに面して数多くのリサイクル・ショップがあり、調理器具から家具、電機機器など、ありとあらゆるものを売っています。何軒か廻って家具が豊富な一軒に狙いを定め、ベッドを三台(客用も頼んだ)、ソファーセット、ダイニングテーブル、勉強机、冷蔵庫、その他を買いこみました。もちろんすべて中古品です。わずかな手数料で家まで運んでくれます。

 次はシーツや枕です。まず安いものを探して大型のスーパーを見てみましたが、どうも枕が柔らかすぎて気に入ったものが見つかりません。それでメルボルンの中心にあるデパートに出かけて見ました。ここでは店員さんが相手をしてくれます。そこで「かたい枕をください」と言いたかったのですが、はて枕がかたいのはなんと表現するのか?

 「肉がかたい」のは tough ですが、枕は噛みきるわけでもなし…。しかたなく hard なやつをくれ、と言ってみると、「ああ、firm な枕ね。」と言われてしまいました。そうか。枕がかたいは「しっかりした」という意味で firm だったのです。枕を2個買い、シーツや枕カバーのセットもここで買って、大きな袋をぶら下げてトラムで帰りました。

 これで住みかはとりあえずなんとかなりました。泊まっていた学生寮から、スーツケースをゴロゴロ転がして引越しです。電気と水が来ているのは確認してあります。この二つがあればとりあえずは暮らせます。電気会社と水道局に電話して新規に使うことを伝えておしまい。手続きは終了です。電話は申し込むとすぐ人が来て電話機を取りつけてくれました。

 あとはガスです。特にこのアパートはガスクッカーが備え付けになっていますから、これを開いてもらわなくては調理ができません。ガス会社に電話して「今日入居しました」と伝えると「はい了解。」さすがにガスは元栓が閉めてありますから、ガス会社の人が来るのを待っていました。ところがその日は現れず、翌日になっても来る気配がありません。夕方になって「あのー、新規で使いたいんですけど…。」と言ってみると「はい、もう登録されていますよ。」それでその日はおしまい。翌日になっても誰も来ません。

 自分で調べてみると、アパートの裏に簡単にわかる所にガスの元栓があります。ひょっとして…と思い、またまた電話して聞いてみました。「自分で元栓を開けて使っていいんですか?」「はいどうぞ」「!!!」日本とは違い、ガスも自分で開けて使うのでした。二日間も知らずにガスなしで暮らしてしまいました。

 アパートに入って20日ほどたった頃、アパートの住人をお互いに知ろう、というパーティーがありました。住人の一組(二人で一軒を借りている)が企画したもので、日本ではちょっと考えにくい集まりかもしれません。ホストは市販のつまみとソフトドリンクを用意するだけで、他にアルコールなどの飲みものが欲しい人は自分で持っていくという、オーストラリアでは一般的なスタイルです。ちなみにこれをBYO(Bring Your Own) といい、レストランにも このシステムをとっているところが多くあります。

 集まったのは30人ほどだったと思いますが、大部分はメルボルン大学の学生でした。国籍は香港が二人、マレーシアが5人、日本が私一人で、あとはオーストラリアでした。企画した一人はインド系の医学生ですが、参加者の名前を方はしからすべて記憶してしまったのには驚きました。