オーストラリア製とは何か?

 一昔前、あるいは現在でもあるかもしれませんがアメリカではバイ・アメリカンという運動がありました。日本は政府が輸入品を買えと奨励する希有の国ですからピンと来ませんが、オーストラリアでもバイ・オーストレリアンは存在します。

 オーストラリア製の物にはカンガルー印の統一されたマークが付けられています。なぜオーストラリア製品を買えという運動が必用かと言えば、もちろん輸入品が多いからですが、失業対策もあるようです。アメ車を買えと言っていたアメリカとは違い、ここでは食料品や軽工業製品などが主になっているようです。

 オーストラリア人は人件費が高くてアジアからの輸入品と競争できないと言いますが、私の感想ではそれだけでなく、製品の質が全般に悪いと思います。オーストラリア製のボールペン等は日本製の半額で買えますが、すぐ書けなくなってしまうので私のクラスメイト等も文句を言いつつ日本製に買い替えています。ホチキスもほとんど使い物にならず、日本製を買いました。

 土産物などは中国製などが多く、例えばコアラの縫いぐるみには Designed in Australia と大書きしてその下に Made in China と小さく書いてある、オーストラリアだけが目立つ表示がありますが、結局海外製品である事に変わりはありません。

 またオーストラリア製という宣伝文句の他に目立つのは owned by Australian というオーストラリア資本である事を示す宣伝文句です。海外からの投資を受け入れる政策を強く推し進める一方で、国内資本を宣伝に使うのも変ですが、例えばメルボルンにあるツアー会社でオートストラリア資本のものは、はっきり言ってサービスがアメリカ資本のものより劣るし、カウンターの係員も横柄です。

 結論として言えるのは、日本やヨーロッパとの競争でもまれて質の向上が著しいアメリカと違い、オーストラリアは、自分達も先進国の一員で、技術力等も同レベルにあるという裏付けのないプライドに頼っているという事です。

 Made in Australia や owned by Australian という宣伝文句は愛国心に訴えるしか手が無い現状を示しているようです。昨年の暮れにオーストラリアの首相が不用意な発言をしてマレーシアとの関係を一時悪化させた事がありました。貿易などの制裁をほのめかしたマレーシアに対し、オーストラリアでは「それならマレーシアへの技術移転を止める」という発言がありましたが、私を含め留学生が口にしたのは、すでに中進国に近いマレーシアにオーストラリアが提供できる技術とは何だろう?と言う疑問です。

 オーストラリアの経済は鉱物資源と農業製品の輸出に頼っており、競争相手としてあげられるのは先進国ではなくてブラジル、アルゼンチン、南アフリカ等です。経済はアセアン全部とオートストラリア一国が同じ規模だそうで、オーストラリアはこの数字を自分達の経済が大きいという比喩に使っていますが、かたや年10%の成長こちらはかろうじてプラスですから、近い将来抜かれる事は間違いありません。

 オーストラリアは色々な意味で非常にユニークな国です。 先進国、途上国、ヨーロッパ、アジアといったステレオタイプの分類の中に居場所を求めるのを止めた時に、初めてオーストラリア人自身のアイデンティティーが見つかるのではないかと感じています。