タスマニアの化けの皮
日本人はタスマニア物語の影響か、タスマニアは美しい所という印象しか持っていないようです。確かに自然や農村地帯の美しさは一級品ですが、人間の営みは必ずしもそうではありません。
前述の旅行中に通り抜けたクインズ・タウンの銅鉱山は日本の足尾銅山の様な物で、周辺の森林をすべて破壊してしまいました。今この町の背後にある山々は丸裸で岩が剥き出しです。まるで前にペルーの4000m級のアンデス越えの峠(森林限界より上)で見たような殺風景さです。今でも川に廃液を流しており、川底には泥がたまっています。
またタスマニアで目につくのが水力発電所です。火力発電所は一ヶ所あるだけであとは水力でまかなっているそうです。水力発電には、またまた自然破壊が付物で、この点でも山がちな日本に少し似ています。何年か前に問題になったのがタスマニア州政府がこれも前述のゴードン川の上流にダムを建設しようとしたことで、これは自然保護派の大反対に遭い、それでもごり押ししようとした州政府に対して連邦政府が介入してこの地域を保護しました。今ではユネスコの指定する世界遺産地域になっているほど貴重な場所です。
タスマニア州はアポリジニーを全滅させた過去の前歴もあり、政治的にはカソリックの影響も強く未だに極端に保守的です。この州では驚いたことに法律で同性愛を禁じており、つい先日国連の人権委員会から基本的人権の侵害と差別にあたるとして、警告を受けました。しかし州政府は変える意志はないと言い張っています。
昨年はタスマニア州選出の議員が連邦政府の海外援助で家族計画を実施するのは人権上疑問があるとして、予算の支出を妨害しました。連邦政府は途上国における問題の多くは人口の増加に起因しているという詳細なレポートを提出しましたが、この石頭議員はもともと理屈ではなく、宗教上の理由で反対しているので議論は成立しないようです。また日本では考えられないことですが、タスマニア州政府は予算でカソリック教会を支援しているそうです。
確かにタスマニア産の牡蠣やりんごジュースはおいしいですが、タスマニア自体は問題だらけです。美しい自然が残されているのは、日本と違って幸運にも人口密度が低かったからだけのようです。でももう一回機会があったら行きたいです。
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