WHAT is different その2

注 この記事は1994年当時のものです。

カルチャー

 「日本とオーストラリアではカルチャーが違う」と言ったら、「何をあたりまえのことを」と思われそうですが、カルチャーの言葉の意味が違うということです。日本ではカルチャー=文化と訳しており、それ以外の訳はまずお目にかかりません。ところがカルチャーを文化と思い込んでいると何だか意味の通じないことが多々あります。

 別項の警察の話でも、「警官に問題が多いのは警察内部のカルチャーが悪いせいだ」という言い方をします。また会社のサービスの善し悪しもその会社のカルチャーの善し悪しによるとされています。日本と違って数の多いゲイやレズビアンは自分達のカルチャーを作り上げています。

 どうもここで言うカルチャーはいわゆる「文化」の他に気風・社風・校風と言ったもの、役人根性とか仲間意識とか言ったものを一般的には意味するようです。ゲイやレズビアンの場合はレズビアン作家と名乗る人がいたりして多少「文化」に近い面があるようですが、私の目からはとても独立した文化には見えません。

 気を付けなくてはいけないのは日本人が外人に対してカルチャーと言う言葉を使う時で、「薫り高き文化」のつもりで話していても相手はそんなに大した物とは受け取っていない可能性があります。「文化」の善し悪しは判断できませんが、「カルチャー」なら悪い可能性や、変える必要性があると判断されてもしかたありません。

スーパー・マーケット

 日本のスーパーとの一番の違いは何と言っても野菜を量り売りしていることでしょう。レジに秤が置いてあり、その上に野菜を乗せて品目をキーインするとレシートに直接値段が打たれます。ハムや一部の惣菜も量り売りですが、こちらはその売り場で包み紙に値段とパーコードの付いたシールを貼ってくれます。でも精肉はなぜかパック売りです。

 時々コンビューターにインプットされていなくて、レジのパーコード・リーダーで値段がわからないことがあります。ほとんどの商品のパッケージには値段が書いてなく、棚に表示があるだけだからです。こういう時はまず確実に客に「これいくらでした?」と尋ねています。嘘を言ったら多分そのまま通ると思います。

 日本では賞味期限のきれた食品は処分されると思いますが、こちらではものによりますが値段を下げて売っています。レタスなどは外側が痛んでくるとその部分を剥いて棄て、そのまま売っています。当然レタスは日に日に小さくなって来ますが、それに連れて値段も下がって来ます。

 もう一つの違いはさすがに日本よりも先を行くカード社会で、各レジにクレジット・カードの磁気情報を読み取る機械が置いてあることです。また銀行のキャッシュ・カードを同様に読んで自動的に口座から引き落とすというサービスもあります。

速度規制

 オーストラリアにも一応は速度規制がありますが、日本よりは随分ゆるい、というのが感想です。メルポルンあたりでもちょっと郊外に出れば,高速道路でなくても100kmまでOKです。同じ様な道路も日本ならせいぜい50kmでしょう。これも基本的には「自分で責任を持て」と言う姿勢の現れだと思いますが、交通量がはるかに少ない事もまた確かです。未舗装道路でも100kmのところがあるのには少々驚きですが。

 Northern Teritory 州には速度制限が無いそうです。もっともここは北部のダーウィンの他に小さな町が幾つかあるだけの砂漠ですから、速度制限の交通標識を立ててまわるのが大変だし、お金がもったいないのではないかと疑っています。先日ここで世界で唯一公認のキャノン・ポール(公道上の自動車レース)が行われました。おえら方がラジオで「アメリカでもやっていない。」といばったら、日本人参加者の乗ったフェラーリがレース中に事故を起こし、4人が死亡してしまいました。

戦争

 あまり知られていない事実ですが、オーストラリアは第一次大戦にも第二次大戦にもベトナム戦争にも参加しています。またオーストラリアはこれらの戦争の記憶、特に第一次大戦の歴史を非常に大切にしています。各地に記念碑があり、トルコ軍との激戦の日は今でも休日です。

 世界の外れのような所に位置するオーストラリアが、そんなに直接の脅威を受けたとはあまり思えません。結局は心理的にヨーロッパ(あるいはイギリス)の一角であることの証しのための出兵だったようで、古い世代や保守派にとって戦争の記憶はそのままアイデンティティーに繋がっています。この辺はどこぞやの元法相と大して変わりありません。

 現在の首相は王制を廃止しユニオンジャックの入っている旗を換え、オーストラリア自体のアイデンティティーを確立したいと主張していますが、まだまだ反対も多く、先日も野党党首が「多くのオーストラリア人がその下で戦った旗を換えることは許さない!」と息巻いていました。が事実は、今世紀半ばまでオーストラリア軍はユニオンジャックを使っていたのだそうです。

刑務所

 刑務所には幸いにして今まで縁がありませんが、ニュースで聞くオーストラリアの刑務所のイメージは日本とは随分違っています。まず一番は刑務所内でのエイズ感染が問題になっている事です。刑務所内での同性愛や麻薬の使用が原因だそうですが、どうも日本人の私にはどうしてそういうことが起こりうるのか???です。

 もう一つ話題になっているのは刑務所の私有化です。日本では国鉄や電電、専売公社が既に私有化され、林野庁を私有化せよ、という意見もありますが、刑務所を民営化するという発想はちょっと出て来ないと思います。私もかねがね政府は統治機関でなくサービス機関であるべきだと思っていますが、それでも刑務所の民営化には思いが至りませんでした。

郵便

 政府のサービスと言えば郵便が筆頭です。オーストラリアの郵便局は昔ながらのポスト・オフィスもありますが、多くはポスト・ショップに変わっています。これが何かと言うとその名の通り、局と言うよりは店です。通常の業務の他に、封筒、便箋、各種グリーティング・カード、小包用の箱、包装紙、梱包材(通称プチプチ),ガムテープから、記念切手のパック、切手に関する本等などが置いてあります。本局ではちょっとした土産物もあり、また小さなミュージアムを併設している所もあります。

 店内は明るくレジ方式です。ここでは切手を何枚かパックにして各料金地区別に売っていたりします。またオージー・パックと言って古切手を袋で売っています。これがなかなか楽しく、ほとんどはありきたりの切手ですが、時々珍しいシリーズ物や、奇麗な動物切手が混じったりして福袋の乗りです。

 まず決定的に違うのは、公共の場で酔うことが法律で禁止されていることです。違反者は即逮捕です。泥酔して倒れると日本では救急車が病院に運んでくれますが、ここではパトカーが監獄へ運んでくれます。これには少々問題もあり、収監中に死亡する人(多分急性アル中)が時々います。でも日本人の多くが、酔って道でくだを巻いているのは、かねがねみっともないことだと思っているので、総理になった暁にはぜひこの法律を制定したいと思います。

 あと違うのはここでは食事の時に圧倒的にワインを飲むことです。レストランでビールを飲んでいる人は殆ど見掛けません。食事の時はワイン、ビールはパブで飲むもの、と相場が決まっているようです。ある資料によるとオーストラリアは世界で最もワインにうるさい国の一つだそうで、確かにうまいワインを安く作っています。ヨーロッパではワインの名前には産地名が使われますが、ここではカリフォルニア等と同様にブドウの品種がワインの名前になっています。私は白は Chablis、赤は Cabernet Sauvignon というのが気に入っています。